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Culture

Dialogue Vol.4 たかが電気#D2021

2020.10.31

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 2020年10月22日、政府が温暖化ガスの排出量を2050年に実質ゼロにする目標を掲げるということが話題となった。再生可能エネルギーを主力電力としていくという方向が打ち出される一方で、地球温暖化の対策として脱炭素を達成するために、原子力発電が必要だという意見もある。
 今回の番組では、2012年に脱原発集会にて「たかが電気のためになぜ命を危険に晒されなければいけないのでしょうか?」という発言が話題になった坂本龍一、D2021主催者の後藤正文、コムアイ、ISEP環境エネルギー制作研究所所長の飯田哲也、他が出演し、原発ににまつわる誤解、代替エネルギーを用いる未来について、議論が行われる。

【出演】
 坂本龍一(アーティスト)
 後藤正文(アーティスト)
 飯田哲也(環境学者)
 竹内昌義(建築家)
 永井玲衣(司会進行)
 コムアイ(アーティスト)

坂本龍一さんの発言

代々木公園「10万人脱原発集会」にて(2012年7月17日)

 みなさんこんにちは。
 今もこちらにたどり着くのが困難なほど、それほどの人波です。4会場以上あるそうですが、それもみんな人で埋まっているということです。

思いおこせば42年前、わたしはまだ18歳でしたが、ここにいました。代々木公園にいました。そのときは日米安保改定反対ということでここにいました。

 そのときは学生や労働者の集まりだったのですが、今日は毎週金曜日の首相官邸前の抗議と同じように多くの普通の市民の方がきていらっしゃると思います。

 ぼくも日本人、いち市民としてここに来ました。本当に40年以上ぶりに、こうやって日本の市民が声を上げているということは、わたしも感無量です。

 それほど原発に対する恐怖や、日本政府の原発政策に対する怒りというものが日本国民に充満しているのだと思います。

 毎週金曜日の首相官邸前の抗議も素晴らしいことだと思いますが、残念ながらそれだけでは原発は止まらない。再稼働されてしまった。もちろんあきらめずに声を上げていくことは大事ですが、どうもそれだけでは政府の耳には届かないらしい、残念ながら。ということで、こういう大きな集会を催したり、それからパブリックコメントをじゃんじゃん書くとか、あるいは、地方の首長、脱原発の首長をどんどん日本に増やしていくことーちょうど今月末にも山口県知事に飯田哲也さんが立候補していますがーそうやって、地方にもとても見識のある首長さんがたくさんいますので、そういう声も集めていくこと。それから、長期的にはなりますが、すぐ止めろと言っても止まらないので、われわれが出来ることは、電力会社への依存を減らしていくということです。
 こういう声が、もちろん彼らには少しはプレッシャーとなって届きますし、電力会社の料金体系の決め方の問題とか、発送電の分離とか、地域独占とか、そういうものがどんどん自由化していけば、原発に頼らない電気をわれわれ市民が選ぶことができるわけです。また、いち家庭や事業所などがどんどん自家発電をしていくと、そうやって時間は掛かりますが、少しでも電力会社への依存を減らせば、わたしたちのお金が、電力会社にいってしまって、そういうお金が原発やそれらの施設になってしまうわけですから、そういうところに払うお金を少しでも減らしていくということは大事だと思っています。言ってみれば、たかが電気です。たかが電気のためになんで命を危険にさらさなくてはいけないのでしょうか。ぼくは、いつごろになるか解りませんが、今世紀の半分くらい、2050年くらいには、電気などというものは各家庭や事業所や工場などで自家発電するのがあたりまえ、常識という社会になっているというふうに希望を持っています。
そうなって欲しいと思います。

たかが電気のためにこの美しい日本、国の未来である子供の命を危険にさらすようなことはするべきではありません。

お金より命です。経済より生命。

子供を守りましょう。日本の国土を守りましょう。

最後に Keeping silent after Fukushima is barbaric.
福島の後に沈黙していることは野蛮だというのがわたしの信条です。

坂本龍一

【企画】 #D2021
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