2月の取材は、山口県宇部市にある長生炭鉱から始まった。韓国から遺族を招くということで、現地から 生配信を試みた。あいにく豪雨となり、開催も危ぶまれる程だったが、韓国政府関係者や日本の国会議員を含む総勢400人以上が雨の中、追悼広場に足を運んだ。これだけの規模の追悼式を東京や大阪ではない地方で、しかも市民主体で行なっていることに敬服する。遺骨収容の進捗について(いまこれを書いている4月での長生炭鉱取材とも重なり、詳報は次回に回すが)遅々として進んでいないとの批判的評価も聞こえてくるが、それには、毎回の調査で現地を訪れ、追悼と取材を続けているジャーナリスト安田浩一氏の言葉を借りて応えたい、「死者に近づこうとする営為それ自体が追悼なのだ」。
極めて短い期間において沖縄で性暴力事件が多発し、しかもそれが隠蔽されていたことが発覚した問題で、沖縄の市民団体が上京し、担当省庁に 直訴した。報告会では沖縄の女性や子どもたちはあらん限りの 警戒と万一の状況にどう対処するかを教わっているにも関わらず、腕力によって被害にあっている実態が伝えられた。
この沖縄で頻発する事件は、日米地位協定を基盤とする不均衡に由来し、基地を温存するどころか基地機能を強化し負担を押し付ける、いやむしろ押し付けていることさえ自覚しない本土側の当事者意識の欠落によって引き起こされている。辺野古基地建設では軟弱地盤のための工事がすでに強行されてしまっているが、県北部の山をまるごとひとつ「投下」してもまるで足りない土砂を、今度は 中部の島を削り取って運搬している。しかも農道の運搬ルールを破って。那覇軍港の移設では、港を「移動させる」ことで強化しないと謳われているが、隣接する牧港補給基地との連携が噂され、市民憩いの生物多様性の宝庫といわれる海の浅瀬「イノー」が潰されようとしている。この軍港移設問題は、辺野古反対のデニー知事が容認する立場をとる等、複雑な要素が絡んでいて理解が難しいが、取材先でもよく一緒になってきた、琉球新報の防衛省担当、 明氏による解説を「完全版」として残しているので参照されたい。
そして、こうした本土側の「無視」の裏で孤軍奮闘してきたのが 宮城秋乃さんだ(唯一、中村之菊さんが 「やんばる応援」を組織)。やんばるでチョウの研究をしてきた宮城さんは、数年前に返還された米軍の北部訓練場の跡地に、軍隊由来の廃棄物が取り残されていることをつきとめ、それらを警察に「返還」する等したことから起訴された。実刑の可能性もあったが、執行猶予がついたことでその場にいた支援者や私を含むメディア関係者の多くが安堵した。ただ宮城さんは直後の報告会で判決に臆することもなく「これからも戦い続ける」という主旨の言葉を発したが、それを私たちがどう受け止めるのかボールはこちら側にある。
おととし改定された国立大学法人法によって大学の自治は奪われつつあり、今国会では学術会議解体法案が審議される予定だ。「学術と表現の自由を守る会」は法案の提出を警戒し(2月時点)、 会見に臨んだ。また元学術会議会長をはじめ、解体を憂慮する学術17団体が 院内集会を開催した。人事とカネをおさえることに成功した安倍内閣以降、政府にモノをいえる団体は学術会議をおいて他にない。最後の芽が刈り取られようとしている。それに連動するかのように大学の”経済的”首が絞まる中で起きてきたがの大学の学費値上げ問題である。去年から値上げ警戒について取材してきたが、値上げ実施が現実のものになると、すぐさま全国規模で 学生の反対運動が巻き起こった。最初に声をあげた6大学を中心に今や全国の50以上の大学、学生が連帯し、今後はもっと増えていくのは間違いない。最終的には、文科省、政府につき返していくことになるだろう。
イスラエル/パレスチナ問題においては、度々topicsでも指摘してきた 年金が虐殺加担につながるというテーマでChoose TVを開いた。パレスチナが「遠い」と感じている人がいるなら、これこそ私たち自身の金であるのだから、無知でいられようはずもない。(工藤)